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シリーズ栄養と疾病

がんや糖尿病、虚血性心疾患や脳血管疾患などの生活習慣病の他、人生を全うするまでに罹る可能性のある疾病は数多くあります。私たちが健康維持を考える時、さまざまな疾病の予防策を意識することも大切です。このシリーズでは年齢層に関わらず、日本人が罹りやすい疾病を中心に取り上げ、基礎的な疾病の知識と予防となる栄養との関わりを再確認していきます。


●骨粗鬆症予防は10代から必要!?

骨粗鬆症というと高齢になってから罹りやすい病ですが、前回お話したような骨の仕組みを考えた場合、骨の成長期にあたる若年世代から予防することができます。
骨量(骨密度)は、子供の成長過程で徐々に増えていき、17~18歳で最大値に達します。以降、20~40代ではわずかに減少しつつも維持され、50代以降になると骨量の低下速度は早まっていきます。女性ホルモンの減少の関係もあり、閉経後の女性は特に急激に骨量が低下する傾向にあります。
このように、骨量は17~18歳以降増えることはありません。この時期までに骨形成に必要なカルシウムなどの栄養素を十分に摂取し、部活やクラブ活動など、やや強度の高い運動をすることで、より多くの骨量を獲得できます。成長過程において骨量を底上げしておくことは、骨量の貯蓄のようなもので、将来的に骨粗鬆症の発症予防にも繋がるのです。

また、カルシウムなどのミネラルだけではなく、最近では骨密度低下の原因としてビタミンD不足も挙げられます。ビタミンDは日光を浴びることによって体内で合成されるビタミンで、丈夫な骨をつくる上で欠かせない栄養素です。屋外で遊ぶことや運動する機会が少ない子供や、美容からの観点で過剰に日焼け止めをする若い女性などの間でも、体内のビタミンD濃度の低さが懸念されています。幼児から思春期のお子さんを子育て中の方は、過食や偏食などといった総体的な栄養不足も含め、食事や生活環境に気を配ってあげることが大切です。


●今からでも遅くはない!中高年層の摂るべき対策

加齢という骨粗鬆症発症のリスクから逃れることのできない中高年層。骨粗鬆症予防の対策は意識的に万全にしておきたい世代です。下記を参考にして、気をつけるべきこと、取り入れるべきことを確実に頭にインプットしておきましょう。

①肥満も痩せもリスク有り
女性220万人を対象に体重と骨折の関係を調査・分析したメタアナリシス※において、肥満であるよりも痩せている方が大腿骨近位部(足の付根、股関節付近)骨折と骨粗鬆症性骨折のリスクが高いという調査結果がある。また一方では、閉経後の日本人女性の椎体(背骨)骨折では、BMI25※以上の群はBMI18.5以上25未満の群よりも64%も多いという報告もある。肥満でも痩せでも骨折リスク上昇の可能性があるため、標準体重であるBMI18.5以上25未満を維持しておきたい。
※メタアナリシス:科学的根拠(エビデンス)を示す研究データの中でもそのレベルによって、信頼性の低いものから高いものにレベルを定義した場合に、もっとも信頼度のレベルが高いデータのことです。具体的には過去に行われた臨床研究を網羅的・系統的に調査して同質の研究を集め、バイアスの危険性を評価しながら分析・統合する方法である、システマティックレビュー(SR)に加えて、過去に行われた様々な臨床研究の中でさらに信頼度の高い報告をピックアップし、そのデータを統合し、より高い見地から分析する方法。
※BMI(Body Mass Index) 体重と身長から算出した、肥満度を表す体格指数のこと。
体重kg÷(身長m×身長m)

②骨をつくるのはカルシウムだけではない
骨をつくる主要な成分カルシウム、その吸収をサポートするビタミンDの他にも、ビタミンKビタミンCビタミンB群タンパク質など多くの栄養素が必要となる。骨粗鬆症の予防には栄養摂取が必須のため、詳しくは次項で確認を。

③運動が苦手ならとにかく歩く!
元々運動習慣がある場合、骨粗鬆症による骨折は少ないという研究結果が多くある。運動の強度によって差はあるものの、閉経した女性においてウオーキングなどの軽い運動は腰椎の骨密度を上昇させ、ジョギングやダンスなど衝撃が強めの運動では大腿骨近位部の骨密度を上昇させる。急な運動はケガに繋がる可能性もあるため、気軽に始められ、日常的に継続可能な範囲でのウオーキングがおすすめ。

④喫煙と飲酒にも骨粗鬆症のリスクあり
喫煙者の大腿骨近位骨折のリスクは非喫煙者を基準とするとその2倍にもなる。また、1日のエタノール摂取量24g以上の飲酒習慣のある男女においても、骨折リスクは高くなるという調査結果がある。また、1日14g未満の飲酒では大腿骨近位骨折のリスクが低下したという結果もあり、禁煙は必須だが、飲酒はほどほどに楽しんでもよさそうだ。


●予防に役立つ栄養素

それぞれの栄養素と骨の関わりを理解して、日々の食事に積極的に取り入れていきましょう。

カルシウム…骨や歯の構成栄養素として重要なミネラル成分で、身体の中にあるカルシウムの99%は骨と歯に存在する。残りの1%は体液(血液やリンパ液)中で一定量を保ち、神経伝達や筋肉の動きに関わり、ヒトの生命維持にとって重要な働きを併せ持っている。
食材:小魚(干しエビ、イワシ煮干し)・海藻(わかめ、昆布)・乳製品(牛乳・チーズ)

マグネシウム…骨や歯の構成栄養素として重要なミネラル成分。カルシウムと共に骨に含まれている。
食材:種実類(アーモンド、ごま)・海藻(あおさ・ひじき)・緑黄色野菜(ほうれん草)・玄米

ビタミンD…骨の発育、形成を助ける。小腸や腎臓でカルシウムの吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を保つ役割があり、
ビタミンDが不足するとカルシウム不足にも陥ってしまう関係にある。
食材:魚介類(あんこう、しらす干し、イワシ、べにさけ)・きのこ類(キクラゲ)

ビタミンK…骨の形成過程で重要な働きを担う、骨の中に存在するオステオカルシンというタンパク質を活性化する。骨粗鬆症の治療薬としても使われている。
食材:納豆・緑黄色野菜(パセリ、ほうれん草、モロヘイヤ)

ビタミンC…骨の質の善し悪しを左右する骨質の材料、コラーゲンの合成に不可欠。
食材:柑橘類(レモン・ゆず)、くだもの(アセロラ、イチゴ)、野菜類(ピーマン、ブロッコリー)

ビタミンB6…コラーゲンの形成に関わり、骨質強化の助けとなる。
食材:にんにく、魚介類(かつお、まぐろ)、バナナ、肉類(レバー)
たんぱく質…コラーゲンの原材料はたんぱく質。摂取不足では骨密度が低下する。
食材:肉類・魚介類・大豆製品

栄養素の詳しい作用や働きは、オンライン講座でも学べます。  (誰でもアクセスできます)



《参考》

公益財団法人 骨粗鬆症財団
http://www.jpof.or.jp/about/sickness/

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」(一般社団法人 日本骨粗鬆症学会他)
http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

文部科学省 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl