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シリーズ栄養と疾病~骨粗鬆症編

がんや糖尿病、虚血性心疾患や脳血管疾患などの生活習慣病の他、人生を全うするまでに罹る可能性のある疾病は数多くあります。私たちが健康維持を考える時、さまざまな疾病の予防策を意識することも大切です。このシリーズでは年齢層に関わらず、日本人が罹りやすい疾病を中心に取り上げ、基礎的な疾病の知識と予防となる栄養との関わりを再確認していきます。


●“骨粗鬆症”の定義とは?

高齢化社会に伴い患者数が急増している骨粗鬆症。その予防としての食事や運動、サプリメントなどが数多く提案される昨今、何かしらの対策を既にとられている方も多いかもしれません。ただの老化現象とも思われがちですが、骨粗鬆症は栄養不足や運動不足などの若年層でもみられる骨の疾患です。そこで今一度、疾患としての骨粗鬆症の定義をおさらいしてみましょう。

WHO世界保健機関(World Health Organization) による定義(1994年以降)より

“骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である”

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」(一般社団法人 日本骨粗鬆症学会他)より

“このようにWHOは骨粗鬆症が疾患であること、骨折を生じるに至る病的過程であり、骨折は結果として生じる合併症の一つであるとした。”

上記をわかりやすくいえば、「骨の中が“鬆(す)”が入ったようにスカスカになって骨が脆くなり、骨折のリスクが高くなっている状態を、骨粗鬆症という疾患と定義づけます」ということですね。こうした世界的な動きを受け、日本でも骨粗鬆症の研究、治療薬の開発、予防のための普及や啓発が盛んに続けられてきました。
さて定義のおさらいの次は、骨がどれだけ人体にとって大切なのか、基本的な役割についての確認です。

●体を支えるだけではない! 骨の役割

①骨格をつくる

体は成人で200個あまりの骨に支えられている。体重を支えつつ歩いたり飛び跳ねたりする強い衝撃にも耐えなければならないため、非常に強く頑丈につくられている。骨の中は空洞で軽さと強度を保ち、手足の骨は両端よりも中央が厚くなっていて、中央部分に曲げるための力が加わっても簡単に折れないような構造になっている。

②各臓器の保護

頭蓋骨…脳
胸郭……心臓、大きな血管、肺など
(胸骨・胸椎・肋骨によりカゴ状に形成された胸郭の中にある)
骨盤……腸、膀胱、生殖器

③カルシウムの貯蔵により恒常性を維持する※

体のさまざまな生理機能のために非常に重要な役割をするカルシウム。骨はその一大貯蔵庫となっている。血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれており、それが不足すると骨からカルシウムを取り出し、逆に多すぎると骨に貯蔵するという綿密なしくみを持っている。体にはおよそ1000gのカルシウムがあり、その99%が骨と歯に存在する。

④血液をつくる

骨の中にある骨髄には、赤色骨髄と黄色骨髄があり、赤色骨髄で血液がつくられている。骨髄の中には、肝細胞(ES細胞)という血球の元になる細胞があり、それが分化して赤血球や白血球がつくられる。

このように、骨は体の骨格を形成し臓器を守る役割だけではなく、私たちの体内環境を正常に保つための恒常性の維持にも関わり、造血機能も持っています。また、骨は新陳代謝によって日々少しずつ生まれ変わっており、体の骨がすべて新しくなるには、成人では3年ほどかかるそうです。この骨の新陳代謝が、骨粗鬆症の原因に大きく関わってきます。

次回は、骨粗鬆症の二つのタイプ「原発性骨粗鬆症」、「続発性骨粗鬆症」について取り上げます。
その原因について、もう少し具体的に見直していきましょう。

※恒常性の維持

生物が生まれながらに持ち合わせている生体機能のこと。具体的には血中のカルシウム濃度調節の他、体温調整、免疫機構の働き、ホルモン分泌調整などが挙げられる。無意識下で外部環境の変化に体内環境が対応し、体を正常な状態に保つ。

《参考》
公益財団法人 骨粗鬆症財団
http://www.jpof.or.jp/about/sickness/

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」(一般社団法人 日本骨粗鬆症学会他)
http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf