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[食材選びは栄養素から!]シリーズ⑥

セルフケアを意識した生活を送るために、欠かすことのできない毎日の食事。ご自身、またはご家族の健康を考えて作る献立は、楽しくもあり、難しくもあるものです。そこでこのシリーズでは、見過ごしがちな普段づかいの食材の栄養素をクローズアップしていきます。「この栄養素とあの栄養素が足りていないから、今週はこの食材を使った料理をつくろう!」と、買い物をしながら頭の中で献立ができあがるようになれば、もうセルフケアの上級者!? みなさんの毎日の献立づくり、総菜選びのヒントとしてご活用ください。


生活習慣病の予防やアレルギー症状の改善など、様々な健康効果が期待されているオメガ3(n-3)系不飽和脂肪酸。中でも、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった必須脂肪酸が手軽に摂れるサバ缶やイワシ缶は、もはやブームを超えて家庭料理の定番食材となっています。
そんな中、健康食品大国とも言われるアメリカでは、何年も前から“クリルオイル”というオメガ3系不飽和脂肪酸が含まれた脂が、魚系から抽出された脂よりも高い評価を得ているのをご存じでしょうか。
日本でも最近、サプリメントとして耳にすることも多くなりつつある“クリルオイル”ですが、クリルとは日本語で“オキアミ”のこと。釣りをしたことがある方にはすぐにおわかりと思いますが、魚のエサにも使われるあの“オキアミ”を原料とした健康食品が、アメリカをはじめ世界中で広く利用されています。
“オキアミ”を魚のエサとしか思っていなかった方は特に、ここでその生態や栄養価について勉強しておきましょう!

●姿はエビだがエビではない! “オキアミ”の実態

“オキアミ”は体長が平均5cmと小さく、見た目は桜エビなどの小エビに似ていますが、エビの仲間ではなく動物プランクトンとして分類されます。環境的な汚染の少ない南極海に生息する“オキアミ”は南極オキアミと呼ばれ、海面を漂う植物性プランクトンを食べ、“オキアミ”自体はクジラやペンギン、アザラシをはじめとする数多くの生物に捕食されます。1体1体は小さくても、巨大な群を成して泳ぐためクジラにとっては主食となり、他の生物にとっても貴重なタンパク源となります。“オキアミ”の雌が一度に卵を産む数は6000~10000とも言われ、圧倒的な繁殖力と生命力の強さが感じられ、もし“オキアミ”の個体数が減少しまうと海洋の生態系が崩れると言われるほど、海洋では重要なエネルギー資源として存在しています。
日本においても、三陸から北海道にかけての太平洋海域に生息しており、漁獲された“オキアミ”のおよそ半分は養殖魚や釣り用のエサとして流通し、その残りが干しえびやふりかけ製品といった食用品として加工されています。

●優れた“オキアミ”の栄養価

先にも触れましたが、“オキアミ”はクジラやアザラシ、魚や鳥まで、多くの動物のエサとなります。クジラのような巨体を維持する栄養源ともなるのは、高タンパクで栄養価が高いことを意味しています。その“オキアミ”から摂れる脂質成分には、ヒトの健康維持にもよいとされるDHAやEPAといったオメガ3系不飽和脂肪酸が多く含まれています。魚由来のオメガ3系不飽和脂肪酸が日本では知られていますが、“オキアミ”と魚由来のオメガ3系不飽和脂肪酸では、体内において吸収される過程に違いがあり、“オキアミ”の脂質成分の方が体内に吸収されやすいことが研究により明らかになっているようです。
また、“オキアミ”に含まれるその他の栄養素として特徴的なのがアスタキサンチンです。老化を促進する活性酸素を除去して酸化を防ぐ、抗酸化作用があります。
“オキアミ”の脂質成分の中にアスタキサンチンが含まれていることで、DHAやEPAの酸化も食い止められ、それらの効果がより発揮されるということです。

●“オキアミ”を食卓に!

以上のように、優れた栄養効果が期待できるとあって、“オキアミ”を原料としたクリルオイルはセルフケアに対する意識が高いアメリカでは人気のサプリメントとなっています。
日本において“オキアミ”は、「ツノナシオキアミ」、「アミエビ」、「イサダ」などと呼ばれ、地域によっては古くから親しまれてきましたが、家庭料理の食材として一般的とは言えません。
ですが、決して手に入れにくいものではなく、百貨店やスーパーなどでは乾物や海産物のコーナーに素干しされたものが販売されています。もちろんそのお店にもよりますが、見た目が桜えびよりも赤色が強い紅色で、少し小さいエビの乾物を見つけたら、原材料を確認してみてください。商品名が“オキアミ”ではなくても、原材料に「ツノナシオキアミ」、「アミエビ」などと表示されています。
栄養成分が凝縮されたサプリメントもいいですが、過剰摂取や体に合うかどうかが不安だったり高価だったりすると、なかなか手が出ないこともあります。そんな時、乾物の“オキアミ”を試してみてはいかがでしょうか。日持ちもよく、カルシウムも摂れて子供から高齢者まで安心して毎日の食事に取り入れることができます。お好み焼き、卵焼き、パスタやサラダのトッピングなど、混ぜるだけ、かけるだけの手軽な食材として重宝します。
サプリメントと同等の健康効果とはいかないまでも、身近な食材として栄養のあるものを摂取することを心がけたいものですね。

●健康食品における脂肪酸

脂肪酸の中には私達が生体内で作ることができない脂肪酸を必須脂肪酸と呼びます。必須脂肪酸にはリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸などがあります。必須脂肪酸はいずれも多価不飽和脂肪酸であるため、構造中に二重結合を持ちますが、その位置によってn-6系とn-3系の2種類に分類することができます。
n-6系多価不飽和脂肪酸はリノール酸と生体内でそれから代謝されてできるアラキドン酸などがあります。一方、n-3系多価不飽和脂肪酸はα-リノレン酸と生体内でそれから代謝されてできるEPA、DHAなどがあります。食事からリノール酸を取り込めばアラキドン酸が、食事からα-リノレン酸を摂取すればEPA、DHAを作ることもできます。
しかし、互いにn-6系の脂肪酸はn-3系に、n-3系の脂肪酸はn-6系に相互変換することはできません。これらの必須脂肪酸は体の中で、エイコサノイドとしての生理機能やそれ以外にも特殊な生理機能を持ちます。また、n-6系とn-3系ではそれぞれ異なった働きをします。
そのため健康食品ではその働きの違いによって含有量が異なったりするわけです。

*エイコサノイドとは
エイコサノイドには代表的なものとしてプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどがあります。これらは血小板の凝集、動脈壁や気管支の収縮、弛緩、血液の粘度などに対してさまざまな調節を行います。

脂肪酸については、オンライン講座で!  

ちなみに保健機能食品制度において、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品では、DHAなどの表示は以下のように表示されます。

<特定保健用食品>
関与成分「DHA・EPA」
「本品は、血清中性脂肪を低下させる作用のあるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を含んでいるので、血清中性脂肪が気になる方に適した食品です。」
<機能性表示食品>
「DHAには認知機能の一部である、数・ことば・図形・状況などの情報の記憶をサポートする機能があることが報告されています。」もしくは「EPA・DHAには中性脂肪値を下げる作用があることが報告されています。」



ちょっと知りたいこんなこと
n-3とω(オメガ)-3の違いって何?

よく脂肪酸の説明で、n-3系脂肪酸とか、オメガ3系脂肪酸といった表現が使われることがありますが、nとオメガの表記の違いは何?と疑問に感じたことないでしょうか?

脂肪は3つの脂肪酸に1つのグリセロールが結びついてできています。その脂肪酸を元素単位で見てみると、炭素と水素が結び付いて鎖のように連なっており、端に酸素が2つついた形をしています。この両端の部分は、それぞれメチル基カルボキシル基と呼ばれます。

n-3とはカルボキシル基の炭素を1番目の炭素としたとき、反対のメチル基の炭素まで合計n個の炭素で構成される脂肪酸の最初の二重結合(炭素が2つの手で繋がっている)がメチル基の炭素から何番目にあるかによって命名する方法が、n-6あるいはn-3系と表現される表示法です。

一方、ω(オメガ)6とかω3と呼ぶ命名法は、メチル基の炭素がカルボキシル基の炭素から数えて最後の炭素なのでギリシャ文字の最後のωを用いて、最後の炭素から何番目に最初の二重結合が存在するかによって命名される方法です。

どちらも脂肪酸の構造を表現する命名法としては同じなのですが、起点となる考え方がちょっと違うだけなのです。ちょっとめんどくさいと思う方もいるかもしれませんね。

一般的に、化学の世界では、n-3系と表現することが多く、食品の成分としてみるときはオメガ3と表現することが多いようです。



《参考》

ナショナルジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/429097/

DHA/EPA協議会
http://www.dhaepa.org/d_e_info.html

日本脂質栄養学会
http://jsln.umin.jp/yougosyu.html