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日本の伝統食である納豆。その歴史は古く、縄文時代の終わりには既に似たようなものがあったという説もあるくらいで、江戸時代の記録では納豆に整腸作用や解毒作用があることが記されており、当時から健康によい食品としても日本人の間で親しまれてきました。
健康にもよく価格も安価で、季節を問わず手に入る納豆ですが、病気に罹って薬を服用することによって食べられなくなる場合があります。ご存じの方も多いかとは思いますが、それはワルファリンという薬を飲んでいる人たちです。納豆は独特のクセがあるので、好き嫌いが明確に分かれる食品でもありますが、薬のために食べられなくなるのは納豆好きには辛い現実ですね。
それではなぜ、ワルファリンという薬を飲んでいると納豆を食べてはいけないのでしょうか? その理由について確認してみましょう。


●ワルファリンは血液をサラサラにする薬

ワルファリンとは、ワルファリンカリウムという成分で作られた薬です。ワーファリンとも言われますが、それは商品名で、いくつかの製薬会社からワルファリンカリウム製剤として販売されています。血液が流れやすく固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ作用があります(抗凝固作用)。
下記のような、血栓(血管の中で血液が固まった状態)ができやすい病気に用いられます。

・心臓人工弁置換手術後(心臓の中の血液の流れに関わる弁に障害があり、人工弁に取り替える手術をした場合)
・心房細動(心臓の心房という部分が痙攣する症状で、不整脈となり血液がよどむようになる)
・心筋梗塞(心臓の筋肉=心筋が酸素不足となり壊死する病気で、心臓の壁に瘤や血栓ができやすい)
・脳血栓症(脳の血管が血栓で詰まってしまう病気)
・静脈塞栓症、肺塞栓症(通称エコノミークラス症候群。長時間、同じ体勢を続けたことにより生じるケースが多い。足やお腹の静脈に血栓ができ、その血栓が肺に飛んで詰まるって肺塞栓症となることもある)

●出血を抑えるビタミンK

それではなぜ、ワルファリンを服用すると納豆を食べてはいけないのでしょうか?
それは納豆に多く含まれるビタミンK*の働きに関係しています。

*ビタミンKには多種類ありますが、天然のものはビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)の2種類のみです。ビタミンK1は植物の葉緑体で生産され、ビタミンK2は微生物から生産されます。発酵食品である納豆に含まれるビタミンKはK2になります。

体のどこかが傷ついて出血した場合、浅い傷なら放っておいても血液が固まることで自然に出血が収まります。これは、肝臓で合成されているプロトロンビンという血液凝固因子の働きによるものです。このプロトロンビンの合成にビタミンKが補酵素として必要で、ビタミンKは体内で間接的に血液を固める役割を果たしているのです。そのためビタミンKが欠乏すると、出血しやすくなってしまいます。
ビタミンKは納豆の他にも海藻類、ホウレン草、モロヘイヤなどの青菜に多く含まれており、それらの食品からの摂取、または腸内細菌によって合成されています。
血液を流れやすくするワルファリンを服用中に、血液を固める働きに関わるビタミンKを大量に摂ると、相反する作用が拮抗してしまい、せっかくの薬の効果が減弱するというわけです。

●納豆にも血液をサラサラにする効果が!

血液をサラサラにする薬ワルファリンと、血液を固める作用をもつビタミンK。この相反する働きがわかれば、ワルファリン服用中の納豆をはじめとするビタミンKを含む食品の摂取制限にも納得できます。
その一方、やはり気になるのが納豆の健康効果。テレビや雑誌にも多く取り上げられた納豆の一成分である“ナットウキナーゼ”は、血液をサラサラにする成分として脚光を浴びた成分でもあります。納豆はその発酵の過程で様々な栄養素が生成されますが、その栄養素の働きについても多く研究され、1980年代には血栓の原因となるタンパク質を分解する酵素が見つかり、それがナットウキナーゼと名付けられました。現在ナットウキナーゼはサプリメント素材として多くの商品に利用されています。本来、食品としての納豆には血栓溶解を促す成分「ナットウキナーゼ」が含まれている反面、血液凝固を促進する「ビタミンK2」も含まれています。
ただしサプリメントとして活用する際は、ビタミンK2の除去されたナットウキナーゼが使われていますので、サプリメントで摂取する場合は、ビタミンKを気にしなくても大丈夫です。

納豆には他にも下記のような健康効果が期待されています。

・原料の大豆…イソフラボン(免疫力アップ)、カルシウム(骨を丈夫にする)、レシチン(整腸作用)
・発酵による機能性…ビタミンK、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、納豆菌(主に美肌・整腸など)

他にも、アンチエイジングや抗炎症作用、動脈硬化予防などに役立つとして注目されている成分、ポリアミンも含まれています。
このように、様々な栄養素が含まれている納豆。しかも血液をサラサラにする効果もあるというのですから、「血栓ができやすい病気に罹ったら、なおさら納豆をたくさん食べた方がよいのでは?」と、薬の服用で食べられなくなるというのはもったいないくらいで、何か矛盾すら感じるところです。しかし、病気と診断されて薬の処方に至ってしまってからでは、同じ作用を持つとはいえ、納豆のパワー(血栓溶解作用として)よりも薬のパワーに軍配が上がるという理解が妥当のようです。

《参考》
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html

日本ナットウキナーゼ協会
http://j-nattokinase.org/nattokinase/

全国納豆協同組合連合会
http://j-nattokinase.org/nattokinase/