免疫について その3【健康キーワード解説】シリーズ ⑩

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「免疫」シリーズ3回目は免疫系の情報伝達物質であるサイトカインの働きとサイトカインストームについてお話しします。

サイトカインは免疫細胞たちの情報言語

免疫細胞たちはどういった方法で情報を共有しているのでしょうか?

病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞(病原体に感染した細胞)の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の分解・消去などをご紹介してきました。

その細胞たちが連携するためにはサイトカインと呼ばれる情報伝達物質が重要な役割を担っています。サイトカインとは主に免疫細胞から分泌される低分子のタンパク質で細胞間の情報伝達の役割を担っています。具体的にはマクロファージ、リンパ球、万能細胞など各種免疫細胞や内皮細胞(血管とリンパ管の内側を構成する細胞)などの細胞が生成し情報を他の細胞に伝える役割をするタンパク質の総称です。

主な役割として、
①免疫細胞を目的の場所に集める働き、
②T細胞やB細胞などの獲得免疫系の細胞の分化(目的に応じて役割を変えていくこと)を誘導する、
③免疫細胞を活性化し、がんや病原体などの異物を抑制、
④免疫応答反応の制御、などが知られています。

これまで、様々な種類のサイトカインが発見されており、それぞれ細胞表面に存在する特異的(特別な反応をする)受容体(センサー)を介して情報が伝達されます。例えば、がんや病原体などの異物が免疫細胞により認識されると、インターロイキン類、インターフェロン類、腫瘍壊死因子類、ケモカインといった、サイトカインが放出され、各細胞たちが連携し多様な免疫応答が誘発されます。
まさにサイトカインは細胞たちが連携するための言語なのです。体内には約800種類存在すると言われており、今も発見が続いています。
以下に代表的なサイトカインの役割を簡単にご紹介しておきます。

*インターフェロン(IFN)

ウイルス感染の阻止作用をもち感染した細胞などを攻撃するNK細胞(リンパ球の一種)やマクロファージを活性化させ、ウイルスや腫瘍細胞の増殖を抑制する働きがあります。この力を生かして、多くの抗ウイルス薬や抗がん剤としても活用されています。

*インターロイキン(IL)

主として免疫応答の調節のために体内の異物と戦うリンパ球やマクロファージ、好中球などの貪食細胞から多く分泌されます。現在では30種類以上存在しています。特に免疫細胞の分化・増殖や活性化、免疫反応の沈静化や細胞死に作用し、免疫バランスを調節する役割を担っています。

*腫瘍壊死因子(TNF)類

腫瘍壊死因子は主にマクロファージから生産され、感染した細胞の死(アポトーシス)を誘導するほか、炎症反応の誘導をおこないます。特にTNF-αは代表的な炎症性サイトカインとして知られています。

*ケモカイン

ケモカインは50種類以上存在し炎症部で多く生産され、白血球などの免疫細胞を炎症部位にすみやかに移動させる働き(走化作用)を持っています。

サイトカインは時として暴走する!

サイトカインは種々の細胞により作られ、多様な生理作用を示しますが、その作用は異なるサイトカイン同士で重複することも多いのです。
またサイトカイン同士は複雑なネットワークを形成し、協調や拮抗(抑制)など相互に作用し合うことで免疫系全体を制御しています。特に一つのサイトカインが作られるとそれに呼応して次々に他のサイトカインが誘導されてくる現象を「サイトカインカスケード」と呼び、これが体内の炎症応答等に関与することが知られています。

例えば、免疫細胞は病原体などの異物を体内で認識すると、様々な炎症性サイトカインを誘導することで生体の炎症を促し、仲間の細胞の排除行動を応援します。一方、抗炎症性サイトカインは、こうした免疫反応が過剰にならないよう炎症を抑制する作用があります。こうして全体のバランスをとっているのです。しかし、ウイルスの侵入や薬剤投与などが原因で炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが崩れ、炎症性サイトカインの分泌が過剰になると、次々と炎症反応が起こります。この結果、自分の細胞まで傷づけてしまう現象を「サイトカインストーム」と呼びます。

サイトカインストームが起こると、血管内凝固症候群や心筋梗塞や脳梗塞、低酸素血症などを引き起こしてしまいます。まさに今話題の新型コロナウイルスはこのサイトカインストームを引き起こしてしまう怖いウイルスなのです。特に高齢者や基礎疾患を持つ人に起こりやすいことがわかっており、サイトカインストームを引き起こさないためには、免疫が正常に機能していることが重要だと言えるでしょう。
最後に新型コロナウイルスの研究について触れておきます。

新たなウイルス性肺炎であるCOVID-19は急速に感染が拡大して世界的流行病となりました。感染者の大部分は無症候または軽度から中等度の症状を示すだけですが、約15~20%の患者では重症肺炎を引き起こし、約5%は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)へと発展します。
COVID-19に関連した主な死因は呼吸不全、敗血性ショック、心不全、大量出血および腎不全です。ウイルスの感染は肺の内皮細胞と肺胞マクロファージによる大量の炎症性サイトカインとケモカインの生成を引き起こします。これらのサイトカインは感染部位に単球、マクロファージ、T細胞を誘引し、さらに炎症性サイトカインが生成されるというサイクルを生みます。肺におけるT細胞の集合も重症のCOVID-19患者におけるリンパ球の減少を引き起こします。

このようにサイトカインは重要な防御システムを構成して免疫反応を調節している一方で、COVID-19の重症例の悪化、ひいては死亡例の原因となることがあるのです。従って、サイトカインストームの効果的に抑制する治療法の開発が、COVID-19の死亡率を下げるために必要な重要な研究対象となっています。

次回は、「最新の免疫研究の一つ、ミトコンドリア活性について」をご紹介していきます。お楽しみに。

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