免疫について その1【健康キーワード解説】シリーズ ⑧

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今回より新しいテーマとして「免疫」について数回にわたってお話します。初回は生体防御としての免疫とその基本メカニズムについてです。

人の体は様々な防波堤で守られている。

私たちの体は日々様々な攻撃にさらされて生活しています。
温熱・冷寒といった気候の変化から、大気中の有害物質や紫外線といった物理的・化学的物質など、あるいは細菌・ウィルスなどの生物学的要因など、外部環境の変化に対応するために、体内の恒常性を維持するための体内機能の調節(ホメオスタシスという)を調整していてバランスを保っています。
その役割を担っている機構の一つが免疫系です。特に外部からの侵入者の防御を担っています。さらに免疫系は体内で起きた異変(例えば、異常細胞の出現や老化して機能を果たせなくなった細胞など)に対しても働いています。

みなさんの体には様々な免疫機構が存在し、ホメオスタシスの維持を行うことで生命活動を維持しています。
例えば、皆さんの皮膚も防御システムの一つです。皮膚は表皮・真皮・皮下組織と3つの層に分かれ、特に表皮の一番外側である角質層はタンパク質のケラチンと死んだ細胞が重なり合って固い層を形成し、病原体の侵入を物理的に防いでいます。

さらに表皮には常在菌が棲んでおり、これも異物の侵入を防いでくれます。加えて汗腺・皮脂腺から出る皮脂は皮膚の表面を弱酸性に保つことで細菌の繁殖を防ぎ、汗や粘液には感染性細菌の細胞壁を破壊して細胞を死滅させてくれる機能も持っています。つまり皮膚はバリア機能の最前線なのです。

また、鼻の穴の中や口腔、食道、胃や腸、さらには尿管や生殖管の中は生物学的には体の中ではなく、体の外(細胞外)ということになります。つまり私たちの体は、簡単に言えば、「ちくわ」のようなもので、真ん中を消化管という長い管で口とお尻がつながっているということになるわけです。

この長い管の外側から内部へ病原体や異物が入り込もうとすると、鼻や口では、くしゃみや咳によって物理的に異物を排除し、鼻水や唾液によって鼻や喉の粘膜を病原体や異物から守っています。しかし気道を通り抜けてしまった場合には、胃の中で胃液が対応します。
胃酸は強酸性で病原体を殺菌したり、あるいは一部の有害物質を分解することができます。

さらに腸の中には皆さんもご存知の腸管免疫と呼ばれる、免疫システムが稼働しています。
腸内には約1000種類、100兆個とも推測される数の細菌が棲んでいて、侵入してきた病原体に対して、餌場になる部分に病原菌を寄せ付けないようにしたり、PHを調整したり、さらに酢酸や乳酸といった代謝産物を産出して病原体が増殖できないようにして、発病を食い止めてくれます。

さらに腸のヒダにはパイエル板という組織があり、ヒダの上皮細胞から侵入してくる病原体を察知する免疫細胞も存在して、二重・三重に体内に病原体が侵入するのを防いでくれているのです。

このように、皆さんの体は、皮膚・消化管・粘膜といった第一次防衛隊に厳重に守られているのですが、それでも、その防波堤を乗り越えて体内、つまり血管を通じて、侵入してくる病原体に対しては、数々の免疫細胞たちが彼らの見事な連携プレイによって排除を行っています。

免疫応答反応は自然免疫と獲得免疫の連携から

ところで、免疫とは「疫(わざわい)から免れる」という意味に端を発する言葉です。
昔の人たちは、病気になることは、わざわいであり、その原因は悪魔の仕業と考えた理していました。ただ伝染病という名前すらなかった頃、ペストにかかって死ぬ人と死なない人がいたのです。
古代ローマでは「ペスト患者の世話はペストにかかって治った人だけがする」という決まりがありました。当時人は経験でそのことがわかっていたのです。
今ではそれが免疫システムのおかげであることは誰もが知っています。この免疫システムは免疫細胞たちが持つ特別な能力によるものです。例えば、「自己と非自己を識別する能力(自分達とそうでないものを区別し排除する能力)」や「記憶能力」「特異的な反応」などです。

大まかには免疫細胞は自然免疫を担当する細胞と獲得免疫を担当する細胞に分けられます。
自然免疫は生物のほとんどに備わっており、細菌・ウイルス・寄生虫などの病原体に特徴的なものを見つけ出し、攻撃する免疫機構です。病原体が体内に入ってきたらすぐに自然免疫が働きます。自然免疫に関わる細胞として代表的なものにマクロファージ、NK細胞、好中球、マスト細胞があります。

一方、獲得免疫は、自然免疫で排除できなかった特定の病原体に対し、免疫細胞を選抜して感染した細胞を攻撃したり、特徴に合わせて武器(抗体)を作り、攻撃する免疫機構です。
また病原体の情報を記憶し、一度作った抗体や選抜した免疫細胞をいつでも使えるように備えることができるのも獲得免疫の特徴の一つです。この特徴が「特異的能力」なのです。代表的なものに樹状細胞、T細胞(キラーT細胞・ヘルパーT細胞・制御性T細胞)、B細胞があります。

風邪などのウイルスが体内に侵入した場合を例に説明すると、まずマクロファージが現場に駆けつけてウイルスの情報を集めます。
マクロファージはそのウイルスの情報を免疫の“司令官”であるT細胞に伝えます。情報を受け取ったT細胞は“殺し屋”のキラーT細胞にウイルスに感染した細胞を探して破壊するように命令します。次にT細胞は、B細胞に抗体を作るように指令を出します。指令を受けたB細胞は、そのウイルスに対抗する大量の抗体を作り出します。この抗体が補体と協力して、ウイルスに感染した細胞を破壊します。

このようにさまざまな免疫を担う細胞が協力して、ウイルスに感染した細胞を攻撃しやがて風邪が治るというわけです。

次回以降は、「抗体の役割と免疫の最新研究」をご紹介していきます。

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