アンチエイジングの三要素 その3【健康キーワード解説】シリーズ③

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前回は酸化とは?から始まりスカベンジャーや抗酸化物質について触れてきました。体内では酸化と同時進行で起きているのが糖化です。今回の糖化1回目はそのメカニズムについてご紹介したいと思います。

体内の「酸化(錆び)」と「糖化(焦げ)」が老化を促進する。

食事で摂取した糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素のうち、エネルギーに変換しやすいのが「糖」です。この糖を細胞内で水と酸素を使って燃焼させ、体の維持と活動に必要なエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を生成します。この過程で有害な活性酸素(フリーラジカル)が発生し細胞を劣化させることが「酸化」です。細胞内でミトコンドリアがエネルギーを作り出すときに活性酸素が発生するのは必然的で避けられません。その防御のためにミトコンドリア周辺には活性酸素を抑制する抗酸化物質が集まっていて、発生した活性酸素を素早く抑え込み、細胞内の状態を保っています。

また細胞にとってもう一つの脅威が「糖化(glycation:グリケーション)」です。体内で消費されずに余った糖質と体を構成するタンパク質が結びつき、体温で熱せられると、老化促進物質の「最終糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)」が生まれます。これは肉やパンを加熱調理すると茶色に焦げ目がつき香ばしくなる「メイラード反応」と同じ状態で、物質としては変質・劣化した状態です。この体内で焦げが発生することを糖化といい、発生してしまったAGEsは分解できずに体内に蓄積し、細胞や血管を劣化させてしまいます。

ところで細胞はリン脂質の二重構造の壁(細胞膜)によって内部の環境を守っています。細胞膜には外部と物質をやり取りするための膜を貫通するチャネル(細胞内に重要な情報を伝える細胞膜に存在するタンパク質)があります。ブドウ糖がタンパク質のチャネルに付着して糖化すると、機能が阻害されて必要な物質の出し入れが出来ず、「細胞死」が起きます。さらに悪いことに、活性酸素が細胞膜に付着すると、膜を酸化させて過酸化脂質を作り出しますが、ここからさらに別の活性酸素が生まれ、膜が壊れて、細胞内部へAGEsの侵入を許してしまいます。侵入したAGEsは核の中にあるDNAにも障害を与え、正常な細胞の複製に支障をきたします。さらにミトコンドリアが生み出す活性酸素を抑制していた機能が低下して、内側からも外側からも攻撃されて細胞死が進行してしまうのです。このように酸化と糖化は常に同時進行で起きており、細胞は常に酸化と糖化の脅威に晒されているのです。

糖化は最初に血液中で起きる。

私たちの体は食事を消化して作りだしたブドウ糖(グルコース)を肝臓から血液に乗せて全身に送り出し、細胞のエネルギー源として供給しています。これが血糖です。空腹時でも100mlの血液中に80〜100mg程度のブドウ糖が含まれていますが、食べ過ぎ等が原因で血液中に含まれる血糖がエネルギー消費を上回る状態が続くと、血液中に血糖が大量に余ります。余った血糖がたんぱく質と反応することが「糖化」であり、体の焦げとも言える「糖化現象」は、まず血液中で起こるのです。赤血球のたんぱく質の一種であるヘモグロビンと糖が結合すると、糖化ヘモグロビン(HbA1c:ヘモグロビンエーワンシー)となり、ヘモグロビンの全身に酸素を運ぶ能力が低下し、体中の細胞が低酸素状態となり新陳代謝が低下してしまいます。いったん糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元には戻りません。またホルモンや栄養素を運搬するアルブミンが糖化するとグリコ(糖化)アルブミン(GA)となります。このHbA1cとGAは生活習慣病診断の主要な指標です。みなさんも血液検査でよくご存知の数値だと思います。血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンやアルブミンに結合する糖の量が多くなるので、当然、HbA1cやGA値は高くなります。

さらにコレステロールの一種であるLDL-C(LDLコレステロール)が糖化すると血管壁に付着しAGEsが溜まっていきます。免疫細胞のマクロファージは異物を食べて分解する白血球の一つですが、糖化LDLを分解しきれず、残骸が血管の内壁に蓄積されて「こぶ」のようになります。これが「アテローム」と呼ばれる粥状の塊で、その周辺の組織が硬くなります。こうして動脈硬化が進行していくのです。

血糖値が高くなるとこのような血管の障害が全身で起きるため、様々な病気を招くことになります。

何故、糖化が起きるのか

それは人間の進化と関係があります。大昔からの食糧難への適応が飽食の現代人の病気の原因になっているとも言えるでしょう。エネルギー源である糖は人にとって必要不可欠で、絶対摂らなければなりません。人類はその長い歴史のなかで、飢餓の状態、災害や食糧難による栄養不足に襲われ続けてきました。そのため、人間はなんとかエネルギー源であるブドウ糖を体内に蓄えようと進化してきました。摂取したブドウ糖を余さず、燃やしてエネルギーを消費すれば健康で元気な状態が保たれます。しかし過剰な糖が産生されると、燃焼しきれない余剰の糖が体脂肪として蓄積されていきます。肥満した脂肪組織では有害な活性酸素の発生が促進され、いわゆるメタボリックシンドロームの状態になるのです。

アンチエイジングにおいては、まずは人類の進化の過程で食べられない状態に体が適応してしまっていることを理解して、過剰に食べない、なるべく体を動かす、など、自身でコントロールする必要があるのです。やはりおいしいものは糖と脂でできているのですね。

次回は、糖化が引き起こす疾病との関係や美容への関与について紹介していきます。